TLS (Totally Locked in State)

TLS (Totally Locked in State),完全閉じ込め症候群とも。
この言葉を最初に聞いたのは学生だった20年前くらいだったでしょうか。
世の中にそんな現象があるのかと,心底驚いたのを記憶しています。

そのTLSの状態は,まるで神話の世界のできごとのようにも感じました。
そして,もし自分がそうなるのであれば死んだ方がマシだとも思いました。

先日,およそTLSの状態だろうと想像される75歳を越える女性のALS患者さんを訪問しました。
「意志」の抽出を依頼されてのことでした。

この方の年齢であれば,戦時中の生まれ。
今は横たえるだけの身体ではありますが,今日まで生き抜いてきた身体。
時代の荒波に揉まれてきた体。
今は0.01mmさえも動かないこのテカテカした手で,かつては子どもを育て,時には喜びで盛大に拍手喝采したこともあったのでしょう。

この方の場合,病気の進行が大変はやく,2年でまったく不動になりました。
現在,眼はほんの 3ミリほど開いています。
もちろん,まばたきはありません。
周りの人たちにできる事といえば,医療的なケア以外には話しかけることくらい。

でも,それが何より大切なのでしょう。
身体の状態がどうであれ,存在をしっかり受け止めて,関わり続けること。

そうこう考えていたら,「もしかしたら,自分の姿を見たいのかもしれない!」と勝手に思い込み,手持ちのデジカメで,ご本人を含めた写真を何枚か撮り,ご一緒に写真を再生して見ました。

すると,まったくの不動ではあるものの,なぜか女性の目から涙が。
角膜は乾燥して見えにくくなっているに違いありません。
生理的な現象の涙かもしれません。
しかし,私の鈍重な魂でも,立場は違えど,この空間を共有しているという共感を感じることができました。

また伺います。

20150806_01

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。