重度障害者はエスパー?

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サヴァン症候群とされるStefanさんのペン画

けっしてオカルトの話をしようというのではありません。

体の自由が奪われた重度身体障害者の中には,ずいぶん特別な能力を持っているな,と思うことが度々あるのです。

たとえば,全盲の視覚障害者が,都内の電車を乗り継いで毎日出勤する姿は珍しいものではありませんが,晴眼者にとってはほとんどエスパーに近い能力といえます。

全盲であっても,移動に熟達した方であれば,まるでコウモリのように音波を巧みに活用してその「場」を理解します。まわりで発せらる音をはじめ,反響音や共鳴音なども手がかりにして,現在位置を捕捉して長距離移動をするのです。

点字を読み取る能力もすごいもの。点字など,晴眼者にはタダのブツブツとして認識できず,ほとんどマネのできない芸当です。

肢体不自由の方の中には,高度に思考能力を向上させた人もいます。

故ホーキング博士は,全身が動かないばかりに,アインシュタインに勝るとも劣らない思考実験家となりました。こちらの記事では,以下のように説明しています。

理論物理学者の多くにとって、紙と鉛筆は科学を探求するうえで究極のツールと言える。手の自由を失うことは、能力を失うに等しい。だがホーキングは、その繊細な運動能力が失われたとき、揺るがない落ち着きをもって適応していた。
彼は複雑な演算や長い数式に関する優れた記憶力を発揮し、まるでモーツアルトが交響曲を頭のなかで作曲していたように、頭のなかで宇宙を“観測”していたのだ。そして、それを強みへと変えていった。
当然のことながら、アルバート・アインシュタインは相対性理論の基礎の大部分を、独創的な思考実験の末につくり上げた。そうした思考実験を、ホーキング博士はまったく新しいレヴェルにまで引き上げたのだ。

「手の自由を失って数式を書けなくなるにつれて、彼は幾何学的かつ形態的なイメージを頭のなかに描き出す能力を歴史上の誰よりも発達させ、問題解決できる力を身につけたのです」と、ホーキングの長年の協力者で友人であったキップ・ソーンは語る。「それによって彼は、ほかの誰も見ることができないものを見られるようになりました。それは、彼の多くの発見の礎となっています」

「車いすの天才」の人生は、聡明さと茶目っ気に満ちていた ──『WIRED』が見た人間・ホーキング博士

われわれ人間には,失われた機能を補完しようとする能力が備わっていますが,一部の人々においては,補完した能力が天井を突き抜けて,恐ろしいくらいに高度な領域に達することもあるのです。

「普通の障害者」の中でも,棒一本でPCを巧みに使いこなす人,車いすを大道芸人ばりに乗りこなす人もいますし,普通の聴覚障害者の中には読唇術といって,口の動きや形で発話を理解する人々も少なくありません。

意識的なのか無意識的なのか,努力によりその能力を開花させることもあれば,脳がそのように振る舞うこともあるようです。サヴァン症候群はその一例で,常人にはマネのしようもない記憶力などを発揮することがあります。

当たり前ですが,いわゆる健康な状態にあるほうが実社会で生きていくには好都合です。しかし,人間は多様性を許容し維持することで進化・発展してきた生物。ですから,何らかの能力が失われてしまっても,社会扶助のもと代替能力を活用してきちんと生きていけます。それが,人間を地球最強の生物とした理由でしょう。

翻って,私たちの街にも多くいる重度障害者について考えてみます。

肢体不自由に加えて発話障害などがあると,積極的なコミュニケーションが極めて取りにくい状態になります。他人からの熱心なコンタクトがないと,ごく単純な意思の表出さえも困難だからです。

この場合,障害当事者からすると,必然的に周りの状況を常に注意深く観察し続けなければならない状況が生まれます。そして,意思表出ができない分,他者の感情をより深く観察するようになるのは想像に難くありません。

他者の表情や顔色,服装や雰囲気,はたまたその日の匂いまでも,健常者が感じられないレベルにまで読み取る能力が高められていても不思議ではありません。

それが極限まで高められると,まるでエスパーとして言いようのない能力を発揮する人々がいるのです。事実,そのような人々を私は知っています。

ただし,現在のテクノロジーでは解明できないこともあるので,そのような特殊能力はオカルトとして一括りにされてしまいがちです。でも,将来はどうなるかわかりません。

私は,重度障害者の中にエスパーのような第六感を持っている事実が,そう遠くない将来,客観的に証明される日が到来するのではないかと密かに思っているのです。

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