人間をより人間らしくするのはテクノロジーである~WheeLog! を例にあげて~

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資料「ICT活用×市民参加で課題解決」(日本NPOセンター機関紙より抜粋)

「人間をより人間らしくするのはテクノロジーである」と,私は確信しています。

先人たちは道具を創り,それを活用して人間としての自由を獲得してきました。
きっと人間のDNAには自由になりたいという配列が組み込まれているのでしょう。
人間らしい人生を獲得するのに,道具の活用は欠かせません。

有史以来,人間は食べるために働くという原始的な生活から徐々に抜け出してきました。
つい数百年前,鍬などの鉄の農作業用具が大変高価だった時代,農民は用具さえも地主から借用する必要がありました。
借用するということは束縛されることを強化することに他なりません。
しかし,製鉄技術が進歩して安価に鉄の用具が作れるようになると,小作農でも自分で鉄の農作業用具が買えるようになりました。
そうなれば,わざわざ地主の傘下で働く必要のひとつが無くなります。
事実,多くの小作農がモノのために束縛される必要がなくなり自由に働く環境を選択できるようになりました。
テクノロジーが人間の自由を拡張したほんのひとつの事例です。

最近でも,IP技術の進化で高額な長距離電話という概念がなくなったことを事例にあげることができます。
40歳以上の人であれば,県外や外国へのべらぼうに高額な電話代に辟易したことがあるでしょう。
今,私たちは通信という技術をほとんど無料のサービスのように享受し,地球上にいるどんな場所の人とでもコストを気にすることなくコミュニケーションが取れます。
つまり,現代の人間は通信(≒コミュニケーション)については,かなり高度な自由を手に入れているのです。
どこにいても誰とでもコミュニケーションが取れ,むかしなら出会えなかった人たちとも友人になれるのです。
当たり前すぎてピンと来ない人も多いかもしれませんが。

その他,移動についても同様です。
自動車や飛行機などその例は枚挙に暇がありません。

さて,前置きはこれくらいにして本題です。

車いすでの移動を考えた場合,街の中にはバリアがたくさんです。
現在の街は健常者という多数派を対象に作られているので,少数派である車いすユーザーのことはあまり考えられていません。
もちろん,この20年くらいでどんどん対策が進んでいますが,まだまだ不十分であると言わざるを得ません。

むかしから善人はたくさんいて,その結果,世の中には多くのバリアフリーマップが提供されてきました。
それぞれは実によくできています。
一方で,多くは特定のエリアだけであったり,ずっと前に作られていて更新がされていなかったり。。。
そもそも,どこで手に入れることができるのかわかりません。
せっかく作ったのに活用されていない例があまりにも多すぎると言えるでしょう。

これらもテクノロジーでの解決が可能だと考えました。
テクノロジーによるバリアフリーマップ革命に本気で取り組んでいるのが WheeLog! プロジェクトです。
2015年3月に Googleインパクトチャレンジで資金を獲得し,2017年5月に現代のテクノロジーを活用したバリアフリーマップを開発しました。
まだまだ至らぬ点も多く,進化中ではありますが(^_^;)

バリアフリーマップアプリ WheeLog! (Android/iOS 対応)は,これまでの「カンペキな情報を集める」ということを捨てることからはじめました。
あるべき姿に逆行しているように思うでしょうが,そうではありません。
なぜなら,情報はすぐに劣化するからです。
集めた瞬間に腐り始めるので,カンペキな情報を集めても仕方がないのです。
言い切ってしまえば。

また,情報収集を特定のスタッフだけでやるにはムリがあるので,当然多くの人が必要です。
それには一過性の善意だけではだめで,継続的にやるにはやっぱり楽しくやれることが重要です。
SNS的に人と人とのつながりを感じながら仲間をつくり,さらには誰かに役立つことを体感しながら運用できなくてはなりません。
人間は承認欲求や帰属欲求がきわめて強いからです。

そして,これまでのバリアフリーマップは,点を集めたものになりがちでしたが,実際の車いすユーザーの移動は3次元的です。
その情報を定量的に収集する必要があるでしょう。

WheeLog! アプリはこれらを試行錯誤しながら実装しつつあります。
ドラゴンボールの元気玉のように,みなさんからの少しずつの情報がとてつもなく大きな経験の集合体になることでしょう。
生命体のように代謝のある生きた巨大な情報の集合体。
CTOの私としては,このアプリがバリアフリーを耕すデジタルの鍬になれたらと考えています。
テクノロジーが車いすユーザーの自由の獲得につながることをイメージしながら。

最近は,国交省との共同プロジェクトWheeLog! アプリが採用されましたし,ユーザーもどんどん増えています。
学会での受賞もあり,今のところ順調です。
資金面をのぞいては。。。

以下の記事は,テクノロジーの活用を踏まえて「集合知」という視点でうまくまとめられています。
掲載許可が得られましたので,PDFでご覧いただけるようになりました。
きっと新しい知見が得られると思います!

資料「ICT活用×市民参加で課題解決」
日本NPOセンター機関紙「NPOのひろば」(2017年11月号・No. 81)

 

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