【何が起きたのか?】EyeMoTユーザーのヒアリング vol.2
Views: 33

2025年12月5日に引き続き、12月8日にもEyeMoTユーザーさんのヒアリングを行いました。約90分にわたって、6名の方々から、現場からの生々しい声を聴くことができました。
前回と同じくAI要約したもの掲載します。
ユーザーさん
| 氏名 | 立場・地域 | お子さん・エピソード |
| Y.S | 母親 愛知 | 生後3ヶ月で気管切開し「言葉の獲得は無理」と医師に言われたが、目の動きと人工呼吸器の空気漏れ音(リーク音)の高低を使って独自の意思疎通を確立。現在は「エア文字盤」で会話をしている。 |
| C.M | 母親 鹿児島 | 小5で発症し寝たきりとなる。「2〜3年で植物状態」と宣告されたが、アニメを見る表情から理解していると確信。ITが苦手だったがEyeMoTを導入し、弟の結婚式ギフト用に絵を描いた。 |
| A.F | 母親 神奈川 | 医師から「余命2年、意思疎通不能」と言われたが、諦めずに絵本読み聞かせ等を継続。伊藤先生の助言でSNS発信を始め、スマートスピーカーで家電を操作するなど世界を広げた。 |
| Y.H | 母親 青森 | eスポーツ大会への参加がテレビ放送された際、それまで「可哀想」だと思っていた親戚の叔父さんが「こんなに楽しんでいたとは知らなかった」と謝りに来た。視線入力を始めてから免疫(NK細胞)の数値が上がった経験を持つ。 |
| A.Y | 母親 東京 | 学校側から「体調管理優先」「寝ていましょう」と言われ、教育を受けさせたい親心とのギャップに苦しみ、一時は登校拒否のような心境になった経験を語った。 |
| M.E | 教諭 | 教員歴12年目。学校でのICT導入は管理職(校長など)の理解と予算に左右される現状を吐露。保護者から「これをやりたい」と提案してもらえることは、教員にとっても背中を押されるきっかけになると語った。 |
みなさんに、何が起きたのか?
1. ヒアリングの目的と背景
- 番組制作の企画提案: 日本電波ニュース社の江波氏が、伊藤先生の取り組みや視線入力装置「EyeMoT」を題材にしたドキュメンタリー番組をNHKに提案するため、ユーザーである重度障害児の保護者たちへヒアリングを行いました。
- ヒアリングの焦点: 江波氏は特に、「EyeMoTに出会う前の状況(意思疎通が難しいとされていた時期のもどかしさ)」や「周囲の理解を得る難しさ」について深く知りたいと考えています。
2. 医師の診断と親の直感のギャップ
参加した保護者たちは、医師からの厳しい宣告と、日々接する中で感じる子供の可能性との間で葛藤していました。
- Y.Sさんの事例(SMA・気管切開): 生後3ヶ月で気管切開し、医師からは「言葉の獲得前であり、身体も動かないためコミュニケーションは取れない」と言われました。しかし、母親は子供の目の力や微細な表情から意思を感じ取り、独自の合図(エア文字盤など)を作って意思疎通を図っていました。
- C.Mさんの事例(ALD・中途障害): 小5で発症し、医師からは「2〜3年で植物状態になる」と告げられましたが、母親は表情や瞬きから「言っていることは理解している」と確信していました。
- A.Fさんの事例(先天性ミオパチー): 生後間もなく医師から「余命2年、親との意思疎通もできない」と宣告されましたが、母親は「理解していないという証明もできないなら、理解していると信じて学習機会を与えたい」と読み聞かせなどを続けました。
- Y.Hさんの事例(病名不明・悪性リンパ腫疑い等): 成長が見られず医師も診断がつかない中、音楽のサビ前で笑う様子などから、母親は「予測ができている=理解している」と感じていました。
3. テクノロジー(EyeMoT)導入による変化
EyeMoTやICT機器の導入は、子供自身の能力を引き出すだけでなく、周囲の認識を劇的に変えるきっかけとなりました。
- 意思の可視化: Y.Sさんは、子供の語彙が増え、選択肢(イエス/ノー)だけでは足りなくなった際に文字盤を導入しました。A.Fさんの娘さんはスマートスピーカーで家電を操作し、自分の意思で環境を変える経験をしました。
- 周囲の反応の変化:
- C.Mさん: EyeMoTを導入後、支援者から「大ちゃんとの会話が楽しみ」「表情が良くなった」と言われるようになりました。
- Y.Hさん: eスポーツ大会への参加がテレビ放送された際、それまで「可哀想」だと思っていた親戚の叔父さんが「こんなに楽しんでいたことを知らなかった」と謝りに来ました。
- フィードバックの重要性(ゴンドラ猫の実験): 伊藤先生は、子供が意思を持って行ったアクションに対して、リアルタイムで反応(フィードバック)があることが重要であり、それによって子供の反応も良くなっていくと解説しました。
4. 教育現場や支援体制の課題
テクノロジーの活用に関して、学校や医療現場との温度差や障壁についても語られました。
- 学校の対応: A.Yさんは、子供の能力を信じて色々な経験をさせようとした際、学校側から「まずは体調管理」「無理させないで」と消極的な対応をされ、期待とのギャップに苦しみました。
- 管理職次第の現状: 特殊支援学校教員のM.Eさんは、ICT導入は「校長などの管理職次第」であり、予算や理解不足で断られるケースも多いと指摘しました。また、保護者が学校側に「やらせてください」と許可を求めなければならない現状にもどかしさを感じています。
- 医療従事者との温度差: Y.Sさんは、定期検診で子供の成長(文字を覚えた等)を伝えても、医師からは「へぇすごいね」程度の反応で終わり、そこから医学的なリハビリなどに繋がることはなかったと語りました。
5. コミュニティと伊藤先生の役割
- 孤独からの解放: 以前は地域に同じ境遇の仲間がおらず孤独だった保護者たちが、伊藤先生の講演会やSNS(Facebook)での発信を通じて繋がり、情報を共有し励まし合えるようになりました。
- 肯定と応援: 伊藤先生が保護者の「親バカ(子供の可能性を信じること)」を肯定し、「お母さんは間違っていない」と背中を押してくれる存在であることが、保護者たちの大きな支えとなっています。
それぞれに、何が起きたのか?
Y.Sさん(愛知県・娘さん19歳)
- 医師の宣告と親の直感:
- 生後3ヶ月で気管切開したため、医師からは「言葉を獲得する時期の前であること」「身体も動かせないこと」を理由に「コミュニケーションは取れない」と断定されました。
- しかし母親は、娘の目が雄弁に語りかけてくることや、人工呼吸器のわずかな空気漏れ(リーク音)の高低・長短を使い分けて「お母さん」と呼びかけていることに気づき、意思疎通が可能だと確信していました。
- 独自の会話法「エア文字盤」:
- 成長と共にリーク音が出せなくなり、イエス/ノーの選択肢だけでは娘の語彙(言いたいこと)に追いつかなくなりました。
- 学校入学時に出会った先生の丁寧な指導で50音を習得。現在は母親が口頭で「あかさたな…」と言い、娘が目の動きで文字を選択する「エア文字盤」で会話を成立させています。
- 医療現場との温度差:
- 定期検診で「文字を覚えた」「スイッチが押せるようになった」と伝えても、医師からは「へぇ、すごいね」という反応だけで、そこから医学的なリハビリや支援には繋がりませんでした。
C.Mさん(鹿児島県・息子さん20歳)
- 絶望からのスタート:
- 小5で副腎白質ジストロフィーを発症。医師からは「2〜3年で植物状態になる」と告げられ、1年足らずで全介助・寝たきりとなりました。
- それでもアニメ(コナンやドラゴンボール)を見る表情から、感情や理解力は残っていると感じていました。
- ITへの苦手意識と克服:
- 9年前に伊藤先生と出会い視線入力を知りましたが、母親自身がパソコン操作に苦手意識があり、導入に踏み切れず諦めかけていました。
- 転機は弟の結婚式。「兄として弟に何かしてあげたい」という思いで一念発起し、EyeMoTを使って息子さんが描いた絵をサンクスギフトとして贈呈しました。
- 周囲の変化:
- 視線入力を始めてから表情が豊かになり、施設の支援者から「大ちゃんとの会話が楽しみ」と言われるほどコミュニケーションが改善しました。
Y.Fさん(神奈川県・娘さん中1)
- 「わからない」を「可能性」へ:
- 生後間もなく医師から「余命2年、意思疎通不能」と宣告され、「積極的な治療をしない選択もできる」とまで言われました。
- しかし母親は「理解していないという証明ができないなら、理解している可能性がある」と考え、絵本の読み聞かせや学習の機会を与え続けました。
- 伊藤先生とSNSの力:
- 伊藤先生のアドバイスでスマートスピーカーを導入し、娘さんが自分で家電を操作できるようになりました。
- 「SNSで公開設定にして発信しなさい」という伊藤先生の教えを守った結果、多くの先輩保護者や支援者と繋がり、孤独な育児から抜け出し、多くの情報を得られるようになりました。
- 学校との闘い:
- 「なぜ勉強させるのか」「何になるのか」という周囲の冷ややかな言葉に対し、「私が諦めたらこの子は終わりだ」という強い意志で、教育委員会に掛け合うなどして学習環境を切り開いてきました。
H.Yさん(青森県・息子さん高1)
- 親戚の謝罪と理解:
- eスポーツ大会に参加した様子がテレビ放送された翌日、それまで「不便で可哀想な子」だと思っていた親戚の叔父さんが訪ねてきました。
- 叔父さんは「こんなに楽しんでいたとは知らなかった。可哀想だと思っていた自分が間違っていた」と涙ながらに謝罪し、地域の見る目が劇的に変わりました。
- 免疫数値の上昇:
- 医学的な根拠は不明ですが、視線入力やeスポーツを始めてから、それまで極端に低かった免疫細胞(NK細胞)の数値が急上昇しました。母親は「本人が主体的に楽しみ、役割を持ったことによる効果」だと感じています。
- 学校との距離感:
- 学校側に理解を求めすぎて自分が疲弊してしまい、「登校拒否」のような心境になった時期もありました。現在は「EyeMoTで繋がれる居場所があるから、学校には過度な期待をしない」と割り切ることで精神的なバランスを保っています。
Y.Aさん(東京都・娘さん中2)
- 学校・療育現場での孤立:
- 就学前、「学校に上がれば一緒にやりましょう」と言われて期待して入学したものの、実際は「まずは体調管理」「寝ていましょう」と消極的な対応をされ続けました。
- 運動会でも、動ける子は競技をする中、重度の子は教師が車椅子を押すだけで、童謡が流される状況に涙が止まらなかったと語りました。
- 伊藤先生による肯定:
- 学校主催のセミナーで伊藤先生が、現状の消極的な教育体制に対して「それはおかしい」と発言してくれた際、周囲の先生が気まずそうにする中で、親として「間違っていなかった」と初めて肯定された気持ちになり救われました。
M.Eさん(山形県・特別支援学校教員)
- 教員としての葛藤:
- ICT機器の導入は管理職(校長)の理解と予算に大きく左右され、熱心な教員が提案しても「予算がない」「自費でやって」と突き放されるケースもある現状を語りました。
- 保護者から「これをやりたい」と具体的に提案してもらえることは、学校側を動かすための大きな力と許可の根拠になるため、実は教員にとってもありがたいことだと述べました。
まとめ
EyeMoT(アイモット)が果たした役割
EyeMoTは単なる入力装置にとどまらず、重度障害児の「意思の可視化」と「周囲の認識変容」をもたらすツールとして機能しています。
- 意思と能力の客観的な証明(可視化)
- 微細な動きや表情でしか意思を示せなかった子供たちが、視線を使って明確に選択したり、文字を入力したり、絵を描いたりすることを可能にしました。
- これにより、親の主観的な「わかっているはず」という感覚が、誰の目にも明らかな客観的事実として証明され、医師や教師、親戚などの周囲の人々に「この子は理解している」と認めさせる力を持ちました。
- 即時フィードバックによる発達の促進
- 自分のアクションに対してリアルタイムで反応(フィードバック)が返ってくる環境を提供しました。これは「ゴンドラ猫の実験」の例のように、受動的なケアだけでは得られない、能動的な学習と意欲を引き出す効果があります。
- 結果として、表情が豊かになったり、身体的な反応が良くなったりといった変化が見られました。
- 社会との接続と認識の変容
- eスポーツやスマートスピーカーによる家電操作などを通じて、子供たちが「支援されるだけの存在」から「主体的に楽しみ、操作する存在」へと変わりました。
- 例えば、eスポーツ大会への参加を見た親戚が、「可哀想な子」という認識を改め、「楽しんでいる子」として接するようになり謝罪に来たというエピソードがありました。
伊藤先生が果たした役割
伊藤先生は技術者としてだけでなく、「保護者の肯定者」および「コミュニティのハブ」として精神的な支柱となっています。
- 「親バカ(可能性を信じる心)」の肯定と応援
- 医療や教育の現場で「無理だ」「理解していない」と否定されがちな保護者に対し、「絶対にわかっている」「お母さんは間違っていない」と力強く肯定し続けました。
- 学校などの消極的な対応に対して、保護者に代わって「それはおかしい」と声を上げたり、保護者の熱意を「親バカ万歳」とポジティブに評価することで、孤立しがちな保護者を精神的に救いました。
- 発信の推奨とコミュニティの形成
- 保護者に対し、SNSで子供の様子を「全体公開」で発信するよう強く勧めました。
- これにより、地域で孤立していた家族が全国の仲間や先輩保護者と繋がり、情報を共有し合えるネットワークが形成されました。これは保護者にとって大きな財産となっています。
- 技術の敷居を下げる
- アプリをダウンロードしてアイトラッカーを接続するだけという、ITに詳しくない保護者でも導入しやすい仕組みを提供し、家庭での実践を可能にしました。
