なぜ、iPadやiPhoneの「視線入力」に期待してしまうのか

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iOS/iPad OS 18が登場しました。

重度障害児・者の当事者や関係者の中には、たいへんな期待を持ってこの日を迎えた人も多いでしょう。なにしろ、無料アップデートするだけで視線入力が使えるようになるのですから無理はありません。

ただ、以下の記事に書いた通り、Tobii社製の視線入力装置で実現する視線入力とはまったく別物なのです。

視線入力は可能ですが、使える人はかなり限定的と言えます。

主な理由は以下です。

【iPhone/oPadの視線入力に期待しすぎてはいけない理由】

  1. 目の検出方法がまったく違う
  2. 補正精度がまったく違う(ブレに弱い・滑らかさ100%だと遅れが激しい)
  3. 比較的高度な視線操作スキルが必要(画面が小さい・ボタンが小さい)
  4. 高難易度なキャリブレーションが必須(13点必要・代理のキャリブレーションでは精度が大きく悪化)
  5. 認知機能が高い人向けのアプリしか操作できない(主に既存のiPhoneやiPadユーザー向け)

既存のiPhoneやiPadユーザーはもちろんのこと、すでにPCを各種アクセシビリティ機能により使いこなしておりiPhoneやiPadを新たに使ってみたい方には、今回の視線入力はズバリな新機能です。

眼球運動に問題がなければ十分に機能しますし、たいていの操作は視線のみで行えてしまうのは実に未来的です。目の廃用のないALSの方にはキラーシステムになる可能性もあります。

一方で、知的障害のある方には、現状ではかなり困難な視線入力でしょう。UI(ボタン等)が小さめなので操作スキルが要求されたり、たいていはアプリの画面遷移を理解している必要があるからです。そもそも、センサリー系アプリが視線入力にまだ対応していないのもあります。なにより、キャリブレーションには13点の注視が必要なのです。

それでも、重度障害児・者の関係者が期待する理由もわかります。ざっくりこんな感じでしょうか。

【iPad等の視線入力に期待する理由】

  • 無料アプリがたくさんある!(まだ視線対応アプリは少ない)
  • 無料で視線入力が使える!(精度はあまりよくない)
  • 持ち歩ける!(確かにそう)
  • タップやスワイプは難しいけど、視線なら!(すでにスイッチや顔の向きで操作できる)

今後、この機能に特化したアプリなどが登場すれば状況が変わると思いますが、マネタイズしにくい分野ですので、どの程度増えるかは未知数。

EyeMoTシリーズをiOS/iPad OSに移植することも技術的には可能とはいえ、安定的な操作環境が担保されにくいので、かなり使いにくいものになると考えています。

もうちょっといじってみて突破口を探ってみます。

こちら、キャリブレーション動画。13点はけっこうきついなあ。

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